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第737号
2022.06.06
確定拠出年金(31)~iDeCoの加入対象年齢~
今回は、政府が年内にも計画策定を予定しているiDeCo拡充について、その方向性を解説する。
年金・退職金レター第710号でもお伝えしたとおり確定拠出年金(以下、「DC」という)の加入対象年齢は、2022年5月に拡大され、個人型DC(以下、「iDeCo」という)については上限年齢が60歳から65歳に引き上げられたところである。
一方、岸田内閣が進める「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)では、貯蓄から投資への転換を図る観点からNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充やiDeCoの改革が進められる見込みとなっており、早くも制度の拡充が検討されることとなった。
1.現在のiDeCo加入対象
2022年5月においてiDeCoの加入対象は以下のとおりである。
iDeCoの加入対象者
加入上限年齢が60歳から65歳に拡大されたが、実質的には被用者である第2号被保険者に限られる。ただし、対象者は330万人(2019年度)にのぼり、同世代人口の半数近くをカバーしている。
2.拡充の方向性
iDeCo拡充を進める観点から加入上限年齢を65歳から70歳に引き上げることが検討される見込みだが、図中②の65歳から70歳の者について拡大されるものと考えられる。対象者は170万人(2019年度)と60歳台前半に比べれば大幅に減少するが、そこそこの数にはなりそうだ。
もう少し踏み込んで、図中①③④の65歳から70歳についてもiDeCoの対象とすることも考えられる。ただし、60歳から65歳の者への拡大が先決であり、国民年金の加入資格との関係を整理する必要がある。現在、国民年金は60歳まで加入し65歳から受給する仕組みとなっており、60歳台前半は保険料も給付もない空白期間となっている。また、国民年金については将来の給付水準の低下についても危惧されており、被保険者期間を65歳まで延長し給付水準の低下を防ぐことが望ましい。結果として、iDeCo の対象拡大にも繋がるが、国庫負担の増加や保険料負担の増加もあり実現へのハードルは低くはない。また、図中①の65歳以上への拡大まで考える場合は、「国民年金の被保険者」であるというiDeCo の加入要件は見直す必要があり、例えば、「国民年金の被保険者であったもの」等が考えられる。
3.終わりに
図中②以外での65歳以上への対象拡大は対象者もそれほど多くはないため、実現の可能性は低いように思われる。むしろ、国民年金の被保険者期間を65歳まで伸ばすことで、現役世代として位置づけられている60歳台前半が公私ともに負担、貯蓄する側に回ることになり、実現すべき重要な課題と言える。
(代表取締役・年金数理人 黒田英樹)
※JPACメールマガジン『年金・退職金レター』は、隔週で弊社コンサルタントが執筆いたします。
黒田 英樹 次回担当は2022年7月上旬の予定です。