企業年金用語集

ア行

  • アクチュアリー

    確率論・統計学などの数理的手法を活用して、主に保険や年金、金融工学の分野で活躍する数理業務の専門家。日本においては日本アクチュアリー会の正会員のことをいう。

  • イールドカーブ

    期間の異なる利回りの集合。退職給付会計で用いられるイールドカーブは、スポットレート(割引債の利回り)のものである。

  • イールドカーブ直接アプローチ

    割引率の設定方法の一つ。イールドカーブそのもの、すなわち、給付見込期間ごとにスポットレートを割引率として使用する方法。

  • イールドカーブ等価アプローチ

    割引率の設定方法の一つ。イールドカーブ直接アプローチにより計算した退職給付債務と等しい結果が得られる割引率を、単一の加重平均割引率とする方法。

  • 移行割合(年金制度)

    年金制度が一時金の内枠移行の場合の、一時金全体に対する年金制度の割合。「退職金の50%移行」「50歳以上の退職者に対する給付の60%移行」などと表現する。全面移行は移行割合が100%のこと。

  • 一時金選択率

    基礎率(計算基礎)の一つ。年金の支給要件を満たして退職した者が選択一時金を選択する割合の見込み。

  • 一般勘定

    保証利率が設定されている生命保険会社の商品で、運用リスクは保険会社が負う。なお、運用実績等によって配当が割り当てられることがある。

  • 内枠移行

    退職金規程により支給される一時金の一部を企業年金制度により支給する形態。
    退職一時金の一定割合を企業年金に移行する方式(横割)と、一定条件(例えば定年等)を満たした場合に移行する方式(縦割)があり、広く採用されている。また、縦割・横割の併用も可能である。
    なお、確定給付企業年金では縦割の移行であっても加入期間3年以上の加入者には一時金または年金を与えなければいけない。

  • 運営管理機関(確定拠出年金)

    確定拠出年金の記録管理や運用方法の選定などの運営管理業務を営む者として、厚生労働大臣の登録を受けた法人。

カ行

  • 会計基準変更時差異

    退職給付会計の適用初年度の期首における、退職給付債務から年金資産とそれ以前の会計基準により計上された退職給与引当金を控除した額。15年以内の一定年数にわたり定額法で償却する。

  • 開放基金方式

    事前積立方式に属する財政方式の一種。加入者の基準日以降の期間に対する給付と、基準日以降に加入する見込の将来加入員に対する給付に対応した掛金を標準掛金とし、標準掛金でまかないきれない場合は特別掛金を設定する方式。厚生年金基金の基本部分はこの方式が適用される。

  • 回廊アプローチ(会計)

  • 確定給付企業年金

    2002年4月に施行された確定給付企業年金法に基づく企業年金。労使が合意した年金規約に基づいて、事業主と信託会社等が契約を結ぶ規約型企業年金と、別法人である基金を設立し、基金において年金資金の管理・運用、年金給付を行う基金型企業年金の2種類がある。

  • 確定給付制度

    退職給付制度の会計上の分類の一つ。確定拠出制度以外の退職給付制度をいう。例えば、キャッシュバランスプランは、企業に追加的な拠出義務が残っているため、会計上は確定給付制度として扱われる。

  • 確定拠出制度

    退職給付制度の会計上の分類の一つ。一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度をいう。

  • 確定拠出年金

    2001年10月に施行された確定拠出年金法に基づく年金制度。従来の企業年金と異なり、拠出された掛金が個人ごとに明確に管理され、掛金とその運用損益により給付額が決定される年金制度。会社が実施し、会社が掛金を拠出する企業型と、国民年金基金連合会が実施し、加入者個人が掛金を拠出する個人型がある。

  • 確定年金

    支給期間中は生死に関わらず無条件で支払われる年金。全期間保証付有期年金のこと。

  • 掛金収入現価

    将来の掛金収入を現時点の価値に割引計算した額。掛金が給与の一定割合で表される場合は給与現価に掛金率を乗じたもの、掛金が一人あたりの一定額で表される場合は人数現価に一人当たり掛金を乗じたものとなる。

  • 下限予定利率

    確定給付企業年金、厚生年金基金の財政計算(掛金計算)に使用される予定利率の下限のこと。直近5年間又は1年間に発行された10年国債の応募者利回りの平均のいずれか低い率に基づき、厚生労働大臣により毎年告示される。財政再計算時に予定利率が下限予定利率を下回っている場合、下限予定利率以上に変更しなければならない。

  • 過去勤務債務

    企業年金の財政上の積立不足。確定給付企業年金では数理債務から数理上資産額を控除したもので、特別掛金を設定して償却する。特別掛金および将来の積立不足に備えるための特例掛金の収入現価を「未償却過去勤務債務残高」という。

  • 過去勤務費用

    退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加または減少部分。 平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する。
    費用処理されていない部分を「未認識過去勤務費用」という。

  • 加重平均期間アプローチ

    割引率の設定方法の一つ。退職給付の金額で加重した平均期間に対応するスポットレートを単一の加重平均割引率とする方法。「退職給付の金額」としては、「期末までに発生していると認められる額」を用いる。

  • 仮想個人勘定残高

    キャッシュバランスプランにおける給与クレジットと利息クレジットの累積残高のこと。確定拠出年金のように実際に掛金を支払うのではなく、架空の口座に累積していくためこのように呼ばれる。

  • 加入年齢方式

    平準保険料方式に属する財政方式の一種。標準的な入社年齢で制度に加入する者に対する平準保険料方式の掛金(標準掛金)を、制度全体の加入者に適用し、標準掛金で給付がまかないきれない場合は別途特別掛金を支払う財政方式。企業年金制度で最も一般的な財政方式。標準的な入社年齢(特定年齢)を定めるため、特定年齢方式と呼ばれることもある。

  • 簡易生命表

    国民生命表の一つであり、推計人口による日本人人口や人口動態統計月報年計(概数)をもとに厚生労働省が毎年作成している生命表。

  • 完全生命表

    国民生命表の一つであり、国勢調査による日本人人口(確定数)や人口動態統計(確定数)をもとに厚生労働省が5年ごとに作成している生命表。

  • 簡便法

    退職給付会計において、毎期の退職給付債務、退職給付費用の認識を期末要支給額、数理債務等を基礎として行う方法。原則として、小規模企業等(計算対象となる従業員数が300名未満)に該当する場合等に適用可能となる。

  • 期間定額基準

    退職給付債務及び勤務費用を計算する際の、退職給付見込額の期間帰属の方法の一つで、退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法。

  • 企業年金

    私的年金のうち、企業などが運営主体である制度。主なものに、確定給付企業年金、厚生年金基金、確定拠出年金(企業型)がある。給付の支払は信託会社または保険会社に委託し、費用は企業が負担する。
    資産運用のリスクは、確定給付企業年金、厚生年金基金では企業(一部従業員)が負い、確定拠出年金(企業型)では従業員が負う。

  • 企業年金連合会

    厚生年金基金を短期間(通常10年未満)で脱退した人 (中途脱退者)等に対する年金給付を一元的に行い、厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金といった企業年金間の年金通算事業を行っている法人。
    その他、企業年金の発展のため、内外の企業年金に関連する事項についての調査研究を行い、関係各方面に提言、要望を行うほか、会員に対する各種情報の提供、相談、助言及び役職員の研修など会員の健全な発展を図るために必要な支援事業を行っている。

  • 擬似キャッシュバランスプラン

    キャッシュバランス類似制度とも呼ばれる。加入期間中はキャッシュバランスプランのように仮想個人勘定残高を保有しないが、退職時の一時金相当額(定額、給与比例またはポイント制による)を基礎として、国債金利など変動に基づいて年金額の改定が行われる制度のこと。

  • 基礎年金

    国民年金から支払われる定額制の年金のこと。老齢、障害、死亡時に給付が行われ、それぞれの給付のことを老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金と呼ぶ。

  • 基礎率

    年金財政で、掛金の額を計算する際などに用いられる予測数値。
    予定利率、予定死亡率、予定脱退率などが使用される。

  • 期待運用収益

    退職給付費用を構成する一要素で、期首の年金資産から期待される当期の運用収益の見込み。期首の年金資産に長期期待運用収益率を乗じて算出した額。

  • 期末要支給額

    期末時点で退職した場合に支払われる退職給付の額。通常は自己都合退職した場合の額を指すが、会社都合で退職した場合の額(会社都合要支給額)と区別する場合には自己都合要支給額という場合もある。簡便法を適用している企業では、期末要支給額を退職給付債務としているケースが多い。

  • キャッシュバランスプラン

    加入者ごとに仮想個人勘定を設け、例えば毎月の給与に一定割合を乗じた額と再評価率による利息が累積され、累積額を原資に年金額が決定するような年金制度。ここで、「再評価率」は国債などの変動に応じて見直すことができる。
    2002年4月より確定給付企業年金および厚生年金基金の加算部分において導入が可能となった給付建制度と拠出建制度の両方の特長を併せ持つ給付設計。

  • 給付現価

    将来発生する年金・一時金等の給付を現時点の価値に割引計算した額。

    「 給付現価 = 給付の発生確率 × 給付見込額 × 発生までの割引率 」
    を、発生見込時期ごとに計算し、累積したもの。

  • 給付算定式基準

    退職給付債務及び勤務費用を計算する際に、退職給付見込額の期間帰属の方法の一つで、退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法。
    なお、この方法による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければならない。

  • 給付建制度

    あらかじめ給付の算定方法が決まっている制度。積立不足が発生した場合には、事業主が追加で掛金を拠出することにより、不足額を埋め合わせる必要がある。例えば、最終給与比例の退職金制度は、給付建制度に分類される。

  • 給付利率

    年金支給開始時の一時金額を、年金に換算するときの基準となる利率。一般的に年金額は一時金額を給付利率に基づく年金現価率で除して求める。キャッシュバランスプランでは支給期間中の指標である。

  • 給与クレジット

    拠出クレジットとも呼ばれる。キャッシュバランスプランで毎年又は毎月付与される金額(利息クレジットを除く)のこと。確定給付企業年金および厚生年金基金では、定額または給与に一定の割合を乗じたものとされている。

  • 給与現価

    将来の保険料支払の基礎となる給与を現時点の価値に割引計算した額。

    給与現価 = 「 給与の見込額 × 従業員の残存率 × 発生までの割引率 」
    を退職までの各年度ごとに計算し、累積したもの。

  • 共済年金(共済組合)

    平成27年10月に被用者年金制度が一元化される前に存在した、公務員等を対象とした公的年金制度で、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私立学校教職員共済年金の三共済があった。現在は、給付のうち厚生年金保険の給付に相当する部分は厚生年金保険に統一され、上乗せ部分に相当する部分(職域加算)の代替制度して年金払い退職給付が創設された。

  • 拠出クレジット

  • 拠出建制度

    あらかじめ定められた拠出額とその運用収益との合計額をもとに個人別に年金給付額が決定される仕組み。運用が低調でも、事業主の追加拠出はない。確定拠出年金制度は拠出建制度に分類される。

  • 許容繰越不足金

    継続基準の財政検証において、掛金計算の要否の判定に用いられる金額。今後20年間の掛金収入現価、もしくは、責任準備金に規約で定める率を乗じて計算する。責任準備金から許容繰越不足金を控除した金額が積立金を下回る場合には、掛金を再計算しなければならない。

  • 勤務費用

    退職給付費用を構成する一要素で、一期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付のこと。退職給付見込額のうち当期に帰属されたものの現在価値として計算される。過去勤務費用と明確に区別するため、IAS19では、現在勤務費用と呼ばれる。

  • 勤労者退職金共済機構

    中小企業退職金共済法に基づき、中小企業退職金共済制度および特定業種退職金共済制度を実施している独立行政法人。

  • 組替調整(リサイクル)

    当期及び過去の期間に、その他の包括利益に含まれていた項目を当期の損益として処理すること。未認識数理計算上の差異の費用処理は、組替調整の一例である。

  • 繰下げ期間

    年金給付や一時金給付の支給を繰り下げた場合における、もともとの支給開始時点から繰り下げ後の支給開始時点までの期間をいう。
    例えば、確定給付企業年金の老齢給付金や脱退一時金は、一定の要件を満たせば支給を繰り下げることができる。

  • 計算基礎

    退職給付会計で、退職給付債務および退職給付費用を計算する際に用いられる予測数値。
    割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率、予想昇給率、一時金選択率、再評価率(キャッシュバランスプラン)などが使用される。

  • 継続基準による財政検証

    確定給付企業年金、厚生年金基金において、制度が今後も継続するという前提で行う財政検証のこと。決算時に責任準備金と積立金とを比較し、積立不足が許容繰越不足金を上回った場合は、定期的な財政再計算を待たずに決算日を基準日として掛金を再計算しなければならない。

  • 現在勤務費用

  • 原始数理債務

    厚生年金基金において、給付現価から標準掛金収入現価および政府負担金現価を控除して特例掛金収入現価を加算した額。

  • 原則法(退職給付債務計算)

    退職給付会計において、毎期の退職給付債務、退職給付費用の認識を予測給付方式で行う方法で従業員300名以上(制度単位)の企業は、原則として対象となる。一旦原則法を採用した企業は、従業員数の著しい減少、もしくは退職給付制度の改訂等により、高い水準の信頼性をもって数理計算上の見積りを行うことが困難になった場合又は退職給付に係る財務諸表項目の重要性が乏しくなった場合を除き簡便法へ変更することはできない。

  • 合計特殊出生率

    一人の女性が生涯に出産する子供の平均人数。

  • 厚生年金基金

    厚生年金保険法に基づいて設立される企業年金。厚生年金保険の報酬比例部分の一部を国に代わって運営するという特徴を持った企業年金であったが、代行返上・解散等により近年その数は減少し、現在では新設が認められていない。

  • 厚生年金保険

    被用者を対象とした公的年金制度で報酬比例の給付。国民年金と同様に、老齢、障害、死亡時に給付が行われ、それぞれの給付のことを老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金と呼ぶ。

  • 公的年金

    国民年金、および厚生年金保険がある。私的年金

  • 後発過去勤務債務

    後発債務とも呼ばれる。過去勤務債務のうち、制度設立以降に発生したもの。制度変更によるもの、基礎率の変更によるもの、基礎率と実績とのずれによるものとに区分される。

  • 後発債務(年金財政)

  • 国際財務報告基準

    投資家保護の観点から各国間の財務諸表作成ルールを共通化することを目的として、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準のこと。なお、国際会計基準(IAS)とは、IASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)によって設定された会計基準のことである。

  • 国民生命表

    生命表のうち、特定の国や地域を対象として作成されたもの。日本では厚生労働省が完全生命表や簡易生命表を作成している。

  • 国民年金

    20歳以上60歳未満の全国民を対象とした公的年金制度のこと。被保険者は第一号被保険者(自営業者、学生等)、第二号被保険者(サラリーマン、公務員等)、第三号被保険者(第二号被保険者の被扶養配偶者)からなる。

  • 個人年金保険

    私的年金のうち、生命保険会社などが個人を対象として販売する年金商品のこと。企業年金とは異なり個人が保険料を負担するが、保険料は契約時(購入時)に決定し、差損益によって保険料が変動することはない。

  • コリダールール(会計)

    FAS87による数理計算上の差異の償却方法の一つ。数理計算上の差異の合計額が、年金資産とPBOとの大きいほうの10%(コリダー:回廊)以内であれば、償却を必要としない方法。回廊アプローチ。

  • コントリビューション・ホリデー

    企業年金において、年金資産がある一定水準を超えた場合に、掛金の拠出を停止すること。確定給付企業年金では年金資産が積立上限額を超過したときに、超過した額を基準として掛金が控除される。

サ行

  • 財政悪化リスク相当額

    20年に一度程度、発生する可能性のある不足額として厚生労働大臣の定めるところにより算定した額。
    資産区分ごとの資産残高に所定の係数を乗じた額の合計額(リスク分担型企業年金においてはさらに予定利率の低下リスクを考慮する)に基づき算定する標準的な方法と、DBの実情に合った方式で算定する特別算定方式がある。

  • 財政検証

    確定給付企業年金、厚生年金基金において、決算時に掛金見直しの要否を検証するもので、継続基準、非継続基準による財政検証と積立上限基準に係る財政検証がある。

  • 財政再計算

    掛金の額を再計算すること。定期的に実施する必要があるほか、給付設計の変更、加入者数の大幅な変動、継続基準への抵触等に伴い実施する。確定給付企業年金は少なくとも5年毎、厚生年金基金では5年毎(初回は3年)に行われる。

  • 財政方式

    給付支払いのための財源を準備する方法のこと。その年に必要な年金・一時金等の給付額をその年の掛金で賄う賦課方式と、給付が発生するまでに運用収益も見込んで事前に積立てる事前積立方式とに区分される。確定給付企業年金は事前積立方式により運営され、事前積立方式の中の加入年齢方式が多く採用されている。また、退職給付会計における退職給付債務は事前積立方式の中の予測単位積立方式の数理債務である。

  • 最低責任準備金

    厚生年金基金が解散した場合、代行部分の給付の原資として国に返還する責任準備金に相当する額のこと。現在1999年9月末の額を基礎に代行部分の免除保険料、給付金、利息相当額等を加減して計算している。利息については、厚生年金本体利回りを基準に毎年変更される。

  • 最低積立基準額

    確定給付企業年金、厚生年金基金において、基準日時点で制度が終了した場合に、加入者等の最低保全給付を確保するために必要な額のこと。最低保全給付の現価である。現価を算出する場合の利率は30年国債の直近5年間の平均利回りを基準に設定された基準利率の0.8倍から1.2倍の間で設定することができる。

  • 最低保全給付

    確定給付企業年金、厚生年金基金における、基準日までの加入期間に関して既に発生したとみなされる給付のことで、受給権保護の観点から最低限保全すべき受給権として位置づけられる。

  • 再評価率

    キャッシュバランスプランにおいて、給与クレジットの再評価(仮想個人残高を算出するための利息クレジットの計算)に用いる利率のこと。定率、国債利回り等の客観的な指標で合理的に予測可能なもの、積立金の運用利回りの実績に基づいて設定する。なお、確定給付企業年金では再評価後の累計額が、再評価を行わなかった場合の累計額を下回ってはならない。

  • 時価移動平均方式

    数理的評価方式の一つ。時価ベース収益のうち、インカムゲインを基準収益とし、それ以外の時価ベース収益を平滑期間で認識する方法。

  • 資産管理機関(確定拠出年金)

    確定拠出年金を実施する事業主が積立金の運用を委託する法人。信託銀行、生命保険会社、農業協同組合連合会、損害保険会社が資産管理機関になりうる。

  • 資産評価調整加算額

    固定資産を数理的評価したものが時価を上回っている場合、その上回った額のこと。時価を下回る場合や数理的評価を用いない場合は零となる。

  • 資産評価調整控除額

    固定資産を数理的評価したものが時価を下回っている場合、その下回った額のこと。時価を上回る場合や数理的評価を用いない場合は零となる。

  • 事前積立方式

    財政方式で、積立金を保有して給付支払の準備をあらかじめ行う方法の総称。賦課方式

  • 私的年金

    企業などが運営主体となる企業年金と、生命保険会社などが個人に販売する個人年金保険がある。公的年金

  • 死亡率

    従業員の在籍中および退職後における死亡発生率で、全人口の生命統計表等を基に合理的に算定する。

  • 社会保険方式

    公的年金で給付の準備を加入者等の拠出する保険料(社会保険料)によって賄う方法。税方式

  • 収益差平滑化方式

    数理的評価方式の一つ。時価ベース収益のうち、平滑化期間の平均時価ベース収益を基準収益とし、時価ベース収益との差額を平滑期間で認識する方法。

  • 終身年金

    生命年金のうち、支給期間の定めがなく死亡するまで支払いがある年金。

  • 修正賦課方式

    財政方式の一種で、賦課方式をベースとしながらある程度の積立金を保有する方式。公的年金は基本的には賦課方式で運営を行っているが、少子高齢化の進展による保険料上昇を抑えるために積立金を保有している。

  • 重要性基準(割引率の変更)

    割引率等の計算基礎の決定に際して、重要な変動が生じていない場合には見直さないことができるとする取扱い。
    割引率については、(1)前期末に用いた割引率で計算した当期末の退職給付債務と、(2)当期末の割引率で計算した当期末の退職給付債務、とを比較し、(2)が(1)の10%以上の変動すると推定されるときには、当期末の割引率で退職給付債務を再計算しなければならない、とされている。

  • 受給待期者

    年金を受ける権利と据置乗率を除いて額は決定しているが、支給開始年齢に達していない受給権者のこと。

  • 純資産額

    時価評価した年金資産(固定資産)に流動資産を加え、流動負債および支払備金を控除したもの。確定給付企業年金および厚生年金基金の非継続基準の財政検証は純資産額に基づいて判定される。

  • 昇給差損益

    数理計算上の差異(退職給付会計)や後発過去勤務債務(年金財政)のうち、予定昇給率と昇給実績とのずれによって生じたもの。一般的に、昇給実績が予定昇給率を上回る場合は昇給差損となる。

  • 初期過去勤務債務(年金財政)

    先発過去勤務債務とも呼ばれる。過去勤務債務のうち、制度設立時の過去勤務債務(または未償却残高)のこと。一般的には制度設立時に、年金資産が存在しない一方で過去の勤務期間を給付額算定に通算するために生じる。

  • 数理計算上の差異

    年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異のこと。平均残存勤務期間以内の一定年数で費用処理する。
    費用処理されていない部分を「未認識数理計算上の差異」という。

  • 数理債務

    給付現価から標準掛金の収入現価を控除したもの。同じ制度・基礎率・計算対象者であっても、採用した財政方式に応じてその額は異なる。厚生年金基金ではプラスアルファ部分について計算したもののことをいう。

  • 数理上資産額

    純資産額に資産評価調整加算額を加算し、資産評価調整控除額を控除したもの。確定給付企業年金および厚生年金基金の継続基準の財政検証および積立上限額は数理上資産額に基づいて判定される。

  • 数理的評価

    財政計算および財政検証において、年金資産の短期的な時価の変動が掛金や不足金に過度に影響を与えないように、資産変動を平滑化すること。基準となる収益(平滑化の対象としない収益)と時価ベース収益との差を一定の年数に分割して認識する。

  • 数理的評価方式

    数理的評価の方法。数理的評価は基準となる収益と時価ベース収益との差額を平滑化するが、その基準となる収益の計算方法。時価移動平均方式、収益差平滑化方式、評価損益平滑化方式、の三種類ある。

  • 据置期間

    年金制度の脱退から年金の支給開始までの期間。

  • 据置利率

    年金制度の脱退から年金の支給開始までの期間の利子に相当する額の基礎となる利率。キャッシュバランスプランでは資格喪失後から支給開始までの再評価率がこれに当たる。

  • スライド調整率

    給付水準調整期間中の年金の改定率を定めるにあたり、本来の改定率から減じられる率のこと。算式で示せば、以下のようになる。

    • 新規裁定年金の改定率 = 賃金上昇率 - スライド調整率
    • 既裁定年金の改定率 = 物価上昇率 - スライド調整率
    • スライド調整率 = 公的年金の全被保険者数の減少率の実績(3年平均) + 平均余命の伸び率を勘案して設定した一定率(0.3%)
  • 静態的昇給率

    ある一時点の給与分布に基づいた昇給率。会社の給与制度における年齢・勤続期間・役職・資格などによる給与格差を表す。

  • 税方式

    公的年金で給付の準備を税金によって賄う方法。社会保険方式

  • 生命年金

    生存を条件とした年金。

  • 生命表

    ある期間における死亡状況に基づき、その死亡状況が変わらないと仮定した場合の生存確率や死亡確率を、男女別・年齢別にあらわしたもの。日本では厚生労働省が完全生命表や簡易生命表を公表している。

  • 責任準備金

    将来の給付に備え、現時点で保有しておかなければならない額だが、一定の幅で変動する。
    給付現価から掛金収入現価を控除した額が下限となり、年金資産が下限を上回る場合、下限額に財政悪化リスク相当額を限度として、年金資産が下限を上回る額を加算した額となる。

  • 選択一時金

    年金受給権を得た退職者、年金受給中の受給者又は受給待期者が年金の代わりに受け取る一時金のこと。通常は年金年額に、給付利率に基づく未支給期間の年金現価率を乗じて算出される。

  • 全部移行(全面移行)

    退職金の移行割合が100%、つまり退職金規程に定められている金額の全てを企業年金から支給する方式のこと。

  • その他の包括利益

    包括利益のうち、純利益に含まれないもの。当年度に発生した数理計算上の差異や過去勤務費用はその他の包括利益に含まれる。

タ行

  • ターミナルファンディング

    1. 財政方式の一つである、退職時年金現価積立方式のこと。
    2. 年金資産が枯渇し年金制度から給付の支払不能が見込まれるときに、給付支払に見合う金額として一時に支払う掛金。
  • 第一号等厚生年金被保険者

    厚生年金保険の被保険者のうち、第一号厚生年金被保険者又は第四号厚生年金被保険者をいう。

  • 第一号厚生年金被保険者

    厚生年金保険の被保険者のうち、第二号、第三号、第四号被保険者のいずれにも該当しない者をいう。

  • 第一号被保険者

    国民年金の被保険者のうち、20 歳以上60 歳未満の者であって、第2号、第3号被保険者のいずれにも該当しない者。自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人など。

  • 対応前リスク充足額

    財政悪化リスク相当額のうち、掛金収入などにより、すでに手当てされている部分のこと。積立金と標準掛金収入現価および特別掛金収入現価を合算した額から通常予測給付額の現価を控除した額(零を下回る場合にあっては零)である。
    リスク対応掛金は、財政悪化リスク相当額から対応前リスク充足額を控除した額の範囲内で、拠出される。

  • 代行部分

    本来は国から支給される老齢厚生年金のうち、厚生年金基金が国に代わって支給を行う部分のこと。再評価および物価スライド部分を除く報酬比例部分の支給が厚生年金基金により代行される。

  • 代行返上

    厚生年金基金が国に代わって運営している厚生年金保険の報酬比例部分(代行部分)に相当する年金資産を国に返還すること。代行返上によって厚生年金基金は確定給付企業年金となり、代行部分の給付を行わなくなる。

  • 代行保険料率

    厚生年金基金の代行給付費に係る財政の均衡を保つのに必要な保険料率として基金毎に計算されるもの。「代行保険料率の算定に関する基準(通知)」に従って計算される。

  • 第三号厚生年金被保険者

    厚生年金保険の被保険者のうち、地方公務員共済組合の組合員たる者をいう。

  • 第三号被保険者

    国民年金の被保険者のうち、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者をいう。

  • 退職給付会計

    退職給付の会計処理の方法。退職給付を支給方法や積立方法に係わらず、労働の対価として包括的に捉え、将来の退職給付のうち当期の負担に属する額を当期の費用として計上するとともに負債の部に計上する考え方に立脚している。

  • 退職給付債務(原則法)

    退職給付のうち、認識時点までに発生していると認められる部分を割引いたもの。

  • 退職給付信託

    事業主が退職給付に充てるために信託した有価証券等の信託財産。以下の要件を満たす場合にのみ退職給付会計上の年金資産として認められる。

    1. 当該信託が退職給付に充てられるものであることが、退職金規程等により確認できること
    2. 信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること
    3. 当該信託は事業主から法的に分離されており、信託財産の事業主への返還および事業主による受益者に対する詐害行為が禁止されていること
    4. 信託財産の管理、運用、処分については、受託者が信託契約に基づいて行うこと
  • 退職給付に係る資産

    連結貸借対照表の資産科目の一つ。年金資産の額が退職給付債務を超える場合に、当該超える額を資産として計上する。

  • 退職給付に係る調整額

    その他の包括利益を構成する要素の一つ。当期に発生した未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用並びに当期に費用処理された組替調整額の合計。

  • 退職給付に係る調整累計額

    連結貸借対照表の純資産の部におけるその他の包括利益累計額の内訳科目の一つ。未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用について、税効果を調整した額。

  • 退職給付に係る負債

    連結貸借対照表の負債科目の一つ。退職給付債務から年金資産の額を控除した額を計上する。退職給付債務のうち年金資産として外部に積立が行われていない部分の額。

  • 退職給付引当金

    個別貸借対照表における負債科目で、退職給付債務から年金資産を控除し、未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務債務、会計基準変更時差異の未処理額を加減した額で計上される。なお、金額がマイナスになる場合は前払年金費用として資産に計上される。

  • 退職給付費用

    当期純利益を構成する項目の一つ。主な内訳は、勤務費用、利息費用、期待運用収益、数理計算上の差異の当期の費用処理額、過去勤務費用の当期の費用処理額、などである。

  • 退職給付見込額

    退職給付債務の計算の過程で退職により見込まれる退職給付の総額のこと。予想される昇給等、合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮したうえで、予想退職時期ごとに、従業員に支給されると見込まれる退職給付額に退職率及び死亡率を加味して見積る。

  • 退職給付見込額の期間帰属

    退職給付見込額のうち期末までに発生したと認められる額を計算するにあたり、退職給付見込額の各期の発生額を割り当てること。日本では、退職給付見込額の期間帰属方法として期間定額基準、給付算定式基準の選択適用が認められている。

  • 退職金の外枠

    企業年金からの給付が、退職金規程により支給される金額に上乗せとして支給される形態。

  • 退職時年金現価積立方式

    事前積立方式に属する財政方式の一種。従業員の制度の加入中には当該従業員への積立を行わず、退職時に年金の原資を一時に払込む方法。

  • 退職率

    在籍する従業員が自己都合や定年等により生存退職する発生率で、個別企業ごとに、リストラ等の異常値を除いた過去の実績に基づき合理的に算定する。

  • 第二号厚生年金被保険者

    厚生年金保険の被保険者のうち、国家公務員共済組合の組合員たる者をいう。

  • 第二号被保険者

    国民年金の被保険者のうち、厚生年金保険の被保険者をいう。ただし、65歳以上で老齢給付の受給権を有する者は除く。

  • 第四号厚生年金被保険者

    厚生年金保険の被保険者のうち、私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者をいう。

  • 脱退差損益

    数理計算上の差異(退職給付会計)や後発過去勤務債務(年金財政)のうち、退職率と退職実績とのずれによって生じたもの。一般的に、給付支払額が数理債務よりも大きい年齢で退職実績が退職率を上回る場合は脱退差損となる。

  • 単位積立方式

    事前積立方式に属する財政方式の一種。現在の給与水準の変化を見込まない前提で、一年間の給付の伸びをその年の掛金とする方法。一時払積増方式とも呼ばれる。

  • 単純終身年金

    保証期間を持たない終身年金のこと。

  • 弾力償却

    確定給付企業年金制度や厚生年金基金における過去勤務債務の償却方法の一種。予定償却年数で計算した下限特別掛金と予定償却年数に対応した最短の年数で計算した上限特別掛金の両方を規約に定め、さらに毎年度の特別掛金を下限特別掛金と上限特別掛金の範囲内で規約に定める方法。

  • 遅延認識

    数理計算上の差異及び過去勤務費用を発生年度に費用処理せず、平均残存勤務期間以内で規則的に費用処理すること。簡便法では適用できない。

  • 中小企業退職金共済

    中小企業退職金共済法に基づき、要件を満たした中小企業が加入することのできる事業主拠出型の年金制度のこと。

  • 中小事業主掛金

    個人型年金加入者である従業員が拠出する掛金とあわせて、中小事業主が拠出する掛金のこと。なお、ここでの「中小事業主」とは、従業員が100人以下であって、企業型の確定拠出年金及び確定給付企業年金を実施していない事業所の事業主のことをいう。

  • 長期期待運用収益率

    退職給付会計における計算基礎の一つ。期首の年金資産の額について合理的に予測される収益率で、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定する。

  • 積立状況を示す額(未積立退職給付債務)

    退職給付債務から年金資産の額を控除した額。退職給付債務のうち年金資産として外部に積立が行われていない部分の額であり、連結貸借対照表において、「退職給付に係る負債」等の科目で負債に計上される。年金資産の額が退職給付債務を超える場合には、「退職給付に係る資産」等の科目で資産に計上される。

  • 積立上限額

    確定給付企業年金、厚生年金基金において、最低積立基準額と下限予定利率等を用いて計算した数理債務のいずれか大きい方の額に1.5を乗じた額のこと。財政検証時に、年金資産がこの額を超えている場合には、超過額を基準として掛金の控除を行う。

  • 定額法(償却方法)

    1. 年金財政における過去勤務債務の償却方法のこと。財政再計算時点の過去勤務債務に対して毎期一定額を償却する。
    2. 退職給付会計における、数理計算上の差異や過去勤務費用の費用処理方法のこと。発生年度ごとに毎期一定額を費用処理する。
  • 定率法(償却方法)

    1. 年金財政における過去勤務債務の償却方法。償却直前の未償却残高の一定割合を償却する。一般に初年度に多くの掛金を拠出したい場合に利用される。
    2. 退職給付会計における数理計算上の差異や過去勤務費用の費用処理方法。未認識残高の一定割合を費用処理する。
  • 適格退職年金

    法人税法施行令附則第16条に規定される適格要件を満たした企業年金。受給権保護に関する措置が不十分であることから、2012年3月末に廃止された。

  • 適格DB制度

    厚生年金保険法に基づく厚生年金基金制度、および、確定給付企業年金法に基づく確定給付企業年金制度の総称。

  • デフォルトファンド

    確定拠出年金制度において、加入者からの運用の指図が行われるまでの間の運用方法として、あらかじめ規約に定められた運用方法(商品)。デフォルトファンドを設定する場合は、その商品の具体的な情報を加入者等に説明する必要がある。

  • デュレーションアプローチ

    割引率の設定方法の一つ。退職給付債務のデュレーションと等しい期間に対応するスポットレートを単一の加重平均割引率とする方法。

  • デュレーション(退職給付債務)

    退職給付の支払見込期間を支払見込期間ごとの金額の現価で加重平均したもの。割引率が変化した場合に退職給付債務がどの程度変化するかを示す感応度でもある。

  • 動態的昇給率

    時間の経過による給与の増加のうち、会社の給与制度における静態的昇給(年齢や勤続期間の増加や昇格によるもの)以外の要因による昇給率。いわゆるベース・アップがこれにあたる。

  • 特定業種退職金共済

    中小企業退職金共済法に基づき、特定業種の中小企業が加入することのできる事業主拠出型の退職金制度のこと。勤労者退職金共済機構が運営主体となり、建設業退職金共済、清酒製造業退職金共済、林業退職金共済の三制度がある。

  • 特定退職金共済

    所得税法施行令第73条に基づく事業主拠出型の退職金制度。市町村や商工会議所等が制度の運営主体となる。特定業種退職金共済制度との違いに注意。

  • 特別掛金

    確定給付企業年金および厚生年金基金において、数理債務(厚生年金基金の場合は、数理債務+最低責任準備金)に対する年金資産の積立不足を償却するための補足掛金の一つ。 償却期間は3年以上20年以内(予定利率の引き下げにより発生した積立不足は3年以上30年以内)で設定する。

  • 特別掛金(事業所の減少等に伴うもの)

    確定給付企業年金制度や厚生年金基金において、実施事業所の減少や事業所に使用される加入者数の大幅減少に伴い、当該事業所が基金に支払うものとして規約に定められた金額。減少事業所に属する積立不足に基づいて計算される。

  • 特別勘定

    運用実績が企業年金の年金資産等に直接反映される生命保険会社の商品で、保証利率はない。つまり、運用リスクは企業(保険契約者)が負うこととなり、運用実績によっては元本を割る場合もある。

  • 特別算定方法

    財政悪化リスク相当額をDBの実情に合った方式で算定する方法。採用および算定方法については、一定の基準を満たしたものとして厚生労働大臣の承認又は認可が必要となる。

  • 特別法人税

    法人税法に基づき、退職年金業務等を行う法人に対し、退職年金等の積立金(厚生年金基金は代行部分の3.23倍を越える積立金)に毎年1.173%(国税1%+地方税0.173%)を課税するもの。確定給付企業年金、厚生年金基金、確定拠出年金等が対象となるが、平成32年3月31日までは、課税が凍結されている。

  • 特例掛金

    確定給付企業年金および厚生年金基金において、財政の均衡が保てない場合に拠出する補足掛金のうち特別掛金以外のもの。財政再計算までの間に発生することが見込まれる積立不足を償却する場合、非継続基準に抵触して掛金を追加拠出する場合などに設定される。

ナ行

  • 人数現価

    将来の制度の加入者数(保険料支払の対象者)を現時点の価値に割引計算した額。
    人数現価 = 「従業員の残存率 × 発生までの割引率」を退職までの各年度ごとに計算し、累積したもの。

  • 年金換算率

  • 年金数理人

    年金数理業務を行う専門家。年金数理に関する十分な知識を有し、年金数理に関する業務に5年以上(うち、2年以上は責任者としての業務経験)従事すること等の要件を満たし、かつ十分な社会的信用を有するものとして厚生労働大臣の認定を受けた者をいう。

ハ行

  • ハイブリット型

    給付建制度と拠出建制度の両方の特徴を併せ持つ退職給付のこと。代表的なものにキャッシュバランスプランがある。

  • 非継続基準

    制度が解散又は終了した場合にそれまでの加入期間に応じて発生したとみなされる給付(最低保全給付)の現価(最低積立基準額)が確保されているかどうかを検証する。積立水準に満たない場合、掛金を追加拠出し、積立不足を解消する必要がある。

  • 評価損益平滑化方式

    数理的評価方式の一つ。時価ベース収益のうち、簿価ベース収益を基準収益とし、評価損益の変動を平滑期間で認識する方法。

  • 標準掛金

    年金制度で、積立不足や剰余がない場合に必要な掛金。予定利率、予定脱退率等を用いて算出され、財政方式によって金額は異なる。計算の方法については各財政方式を参照。
    特別掛金

  • 標準資格喪失年齢

    最低保全給付の計算において(1号方法の場合)、規約に定められている標準的な退職年齢。多くの場合は定年年齢。

  • 賦課方式

    財政方式の一種で、給付に対する事前の積立を行わず、退職者の発生する都度給付のための資金を準備する方法。一般に公的年金は賦課方式で運営されている。事前積立方式

  • 複数事業主制度

    複数の事業主が共同して設立した一つの企業年金制度。総合型厚生年金基金制度や連合型確定給付企業年金制度等が該当する。

  • 物価スライド

    物価の変動に応じて年金額が変動すること。公的年金では受給期間中の年金額は毎年の物価変動率(給付水準調整期間中は、物価変動率にスライド調整率を加味した率)に応じて変動する。

  • プラスアルファ部分

    厚生年金基金において、代行部分を上回る給付のこと。

  • 平滑化期間

  • 平滑期間

    平滑化期間。数理的評価で基準となる利回りと時価資産利回りとの差を繰り延べる期間。最大5年。

  • 平均残存勤務期間

    在籍する従業員が貸借対照表日から退職するまでの平均勤務期間。予定退職率及び予定死亡率を用いて算出され、数理計算上の差異及び過去勤務費用の費用処理年数を決定する際の基礎となる。

  • 平均寿命

    0歳における平均余命のこと。

  • 平均余命

    生命表による死亡率に基づく、ある年齢の人がその年齢以降死亡するまでの平均期間。
    「生命表によるある年齢以上の人口」 ÷ 「ある年齢の人口」で計算される。

  • 平準保険料方式

    事前積立方式に属する財政方式の一種。在職中の全期間にわたり保険料水準を平準化する方式のこと。
    なお、「平準化」とは、給付および保険料が定額の場合には一定金額のことを、給与比例の場合には給与に対する一定比率のことを意味する。

  • 別途積立金

    確定給付企業年金、厚生年金基金において、決算時に剰余が発生した場合に留保する剰余金のこと。不足の場合は繰越不足金となる。

  • ポイント制

    退職金の算定方式の一つ。一般的に、等級・役職・評価・勤続年数によって付与される一年間(一月)あたりのポイントを決定し、それを累積した額に単価を乗じて退職金が決定される。

  • 包括利益

    特定期間における純資産の変動のうち、資本取引や配当金の支払い等を除いたもの。

  • ポータビリティ

    転職時等に、転職前の年金制度の資産を、転職後の制度に移換することを可能とすること。これにより、転職先の制度に移換した資産も合わせて、転職先の制度からの給付を受けることができる。

  • 保証期間(年金)

    その期間内の給付の支払が、生死に関わらず保証された年金。保証の方法としては遺族に引き続き年金として支払う方法と、残存保証期間の年金を一時金換算して支払う方法とがある。

マ行

  • 前払年金費用

    個別貸借対照表において、退職給付債務から年金資産を控除し、未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務債務、会計基準変更時差異の未処理額を加減した額がマイナスとなる場合(退職給付引当金がマイナスになる場合)、計上される資産。

  • マクロ経済スライド

    社会全体の年金制度を支える力の変化(被保険者数の減少)と平均余命の伸びに伴う給付費の増加というマクロでみた給付と負担の変動を基準に、公的年金の給付水準を自動的に調整する仕組み。
    我が国の公的年金給付は固定した財源(保険料、国庫負担等)の範囲で行われるため、年金財政の均衡を図るため給付水準を調整する必要がある。

  • 未認識過去勤務費用

    過去勤務費用のうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないもののこと。税効果を調整のうえ、純資産の部におけるその他の包括利益累計額に計上される。

  • 未認識数理計算上の差異

    数理計算上の差異のうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないもののこと。税効果を調整のうえ、純資産の部におけるその他の包括利益累計額に計上される。

  • 免除保険料

    厚生年金基金において、代行部分を賄うための保険料のこと。
    基金によって、2.4%から5.0%の範囲内で厚生労働大臣により決定される。厚生年金基金に加入する事業所は、厚生年金保険料の国への納付が一部を免除され、その免除相当分の保険料を厚生年金基金へ納める。

ヤ行

  • 有期年金

    年金の支給期間があらかじめ決まっている年金。保証期間の有無には関わらない。

  • 予想昇給率

    基礎率(計算基礎)の一つ。個別企業における給与規程、平均給与の実態分布、過去の実績等に基づき、合理的に推定して算定する。

  • 予測単位積立方式

    事前積立方式に属する財政方式の一種。退職時の給付を予測し、その給付のうち当期に発生したと考えられる金額を掛金とする方式。定額給付などの一定の条件を満たす制度に対しては単位積立方式と一致する。退職給付会計における債務はこの方式の考え方にしたがっている。

  • 予定死亡率

  • 予定脱退率

  • 予定利率(財政計算)

    年金制度の保険料および数理債務の計算において、将来の給付および保険料などを割り引くための利率。確定給付企業年金や厚生年金基金では下限予定利率以上で、積立金の運用収益の長期予測に基づいて定める。

  • 予定利率(最低積立基準額)

    最低積立基準額の計算において、将来の給付を割り引くための利率。30年物国債の応募者利回りの過去5年平均を基礎として厚生労働大臣によって定められる。
    労働組合等の同意を得た場合には、0.8以上1.2以下の数を乗じた率とすることができる。

  • 四階建て年金

    日本の年金制度について、制度の役割や運営主体の特徴を踏まえて説明する用語。

    1階部分:国民年金(基礎年金)
    2階部分:厚生年金保険
    3階部分:企業年金
    4階部分:個人年金

    なお、1階部分と2階部分(いずれも公的年金)をあわせたり、4階部分(従業員の自助努力)を除外することで三階建て年金ということもある。

ラ行

  • 利源分析

    財政決算時に剰余 / 不足の発生原因を分析すること。剰余 / 不足は財政計算に用いた基礎率と実績との差(利差損益、昇給差損益、脱退差損益など)や、過年度の剰余 / 不足に係る利息により発生する。

  • リスク算定用資産構成割合

    運用に係る資産を、リスクの大きさに応じて、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、一般勘定、短期資産、および、その他の資産に区分した場合の当該構成割合のこと。

  • リスク対応額

    財政悪化リスク相当額から対応前リスク充足額を控除した額(零を下回る場合にあっては零)のうち、リスク対応掛金の対象とするもの。

  • リスク対応掛金

    財政悪化リスク相当額(通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額。)に対応するために拠出する掛金のこと。

  • リスク分担型企業年金

    確定給付企業年金で実施できる給付設計の一つ。積立状況に応じて給付額が変動するため、他の確定給付企業年金とは異なり、掛金の追加リスクが生じない。(通常、会計上は確定拠出制度として分類される)

  • 利息クレジット

    キャッシュバランスプランで仮想個人勘定残高に累積される利息相当のこと。
    「前月(年度)末残高 × 再評価率」といった形で算式化されている。

  • 利息費用

    期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息で、期首の退職給付債務に割引率を乗じて計算される。

  • 連生年金

    本人が死亡した場合に、その遺族の生存や一定の年齢を条件として年金が引継がれるような年金。「連生」とは複数の生命のことである。

ワ行

  • 割引率

    退職給付債務および勤務費用の割引計算に使用される利率。退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければならず、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定される。

英数字

  • ABO

    累積給付債務(Accumulated Benefit Obligation)の略。 PBOから将来の昇給見込みを除外して評価した額。

  • ASC

    FASB会計基準編纂書(Accounting Standards Codification:会計基準のコード化)のこと。退職給付会計は、ASC715号(Compensation -Retirement Benefits)で取り扱われている。ASC715号は、従来の財務会計基準書(FAS)87号、132号、158号をまとめたものである。

  • CB

    キャッシュバランスプランのことで、Cash Balance(個人勘定の一時払い)を略している。

  • CSC

    現在勤務費用(勤務費用)のこと。Current Service Costの略。

  • DB

    一般的には確定給付企業年金のことを指すが、本来は給付建年金制度(確定給付制度)の総称のこと。Defined Benefitの略。

  • DBO

    確定給付債務または給付建債務(Defined Benefit Obligation)。IAS19における年金債務。予測単位積立方式で評価され、基本的にはPBOと同様の評価である。

  • DC

    一般的には確定拠出年金法に基づく確定拠出年金制度のことを指すが、本来は拠出建年金制度(確定拠出制度)の総称のこと。Defined Contributionの略。

  • EITF

    新たに発生した問題に対する検討委員会報告。

  • FASB

    米国財務会計基準審議会。米国における財務基準設定主体。

  • FRS

    英国会計基準審議会(ASB)によって設定される財務報告基準のことであり、Financial Reporting Standardsを略している。なお、ASBの上部団体として独立機関である英国財務報告評議会(FRC)がある。

  • FRS17

    退職給付に関する英国財務報告基準。2005年から適用となった。

  • FSP

    FASBのスタッフの見解のこと。

  • GAAP

    一般に公正妥当と認められた会計原則のことで、Generally Accepted Accounting Principleを略している。

  • IAS

    国際会計基準のこと。IASBの前身であるIASCによって公表された基準。IASBは設立時にIASすべてを引継いだ。

  • IAS19

    被用者給付に関する国際財務報告基準。1999年1月から適用となった。IAS19は退職給付の他、離職給付(解雇給付)や有給休暇も対象としている。

  • IASB

    国際会計基準審議会。国際財務報告基準の設定主体。

  • IFRIC

    国際財務報告解釈指針委員会。IFRSで具体的に取り扱っていない問題点に関する指針。退職給付会計については、2007年7月にIFRIC14号「給付建資産の上限、最低積立基準との関係」が公表された。

  • IFRS

    国際財務報告基準のことで、International Financial Reporting Standardsの略。

  • PBO

    予測給付債務(Projected Benefit Obligation)の略。
    退職給付会計において、退職給付債務として採用されている。

  • PSC

    過去勤務費用のことで、Past Service Costの略。

  • PSL

    過去勤務債務のことで、Past Service Liabilityの略。

  • UC

    単位積立方式
    特にPUCと区分するためにTUC(Traditional Unit Credit)と呼ぶこともある。

  • 1号方法(最低保全給付)

    最低保全給付の計算方法の一つ。標準資格喪失年齢に退職した場合の給付額に、按分率(A/B)を乗じたものを最低保全給付とする方法。ただし、Aは基準日に資格喪失した場合の係数、Bは標準資格喪失年齢に資格喪失した場合の係数。

  • 2号方法(最低保全給付)

    最低保全給付の計算方法の一つ。基準日に資格を喪失した場合の給付額に、喪失日の年齢に応じた率を乗じたものを最低保全給付とする方法。

  • 1.57ショック

    1989年の人口動態統計に基づく合計特殊出生率が1.57となり、それ以前の最低である1966年(ひのえうまの年)を下回ったこと。少子化進展の象徴とされた。

  • 401(k)

    米国の一般的な確定拠出年金のことであるが、確定拠出年金の総称として使われることもある(日本版401(k)など)。本来の意味は米国内国歳入法401条第(k)項のことであり、会社が従業員に支払う繰延賃金に関する税制上の取扱いの定めである。

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